.11B Derma, 165:37-45. 2010. ◆特集/これはやってはいけない美容皮膚診療 レーザー脱毛でやってはいけないこと 鈴木晴恵* Key words:レーザー脱毛(laserhair removal),永久脱毛・永久減毛(permanent hair reduction), 完全脱毛(complete hair loss),一時脱毛(temporary hair loss),メラダイン(Meladine), PSF (pneumatic skin flattening) Abstract レーザー脱毛は,この15年の間に電気脱毛(electrolysis)を凌ぐ方法として広 まった.レーザー脱毛の開発により永久脱毛は短時間で容易に行えるようになり,術者の 技術習得も比較的容易であるため,瞬く間に医療機関にもエステ業界にも広まった.無駄 毛処理に対する意識が高い日本では脱毛の需要が多く,医療機関だけで賄えるものではな い.このため脱毛に携わる医療機関はエステサロンと競争や対立をするのではなく,脱毛 技術においては模範を示し,脱毛を希望してくる人のなかに存在する隠された疾患や薬の 副作用による多毛症の発見・治療や,合併症対策など専門知識を生かした貢献をすること で彼らと協調していくのが専門家としての役割であろう. 序 論 レーザー脱毛は約15年前に海外の文献に初め て記載されてからの歴史であるため,長期減毛 (long-term hair reduction)として認識されてい る.日本ではこの15年の問に,電気脱毛(elec- trolysis)を凌ぐ方法として広まった.広範囲の脱 毛を行う際には電気脱毛に比べ,時間的にはるか にlll・く簡便な方法であり,術者の技術習得も容易 である.しかしながら,短い歴史しかなくt脱毛 効果の持続性については確認されていないため, 永久脱毛をうたうことには慎重になる必要があ る.脱毛技術は簡単であるため,生理的な範囲で の無駄毛の処理を行う場合にはわざわざ医療機関 で行う必要はないと考える.また,日本人は無駄 毛処理に対する意識が高い人種であり,ほとんど の女性だけでなく多くの男性までもが脱毛の対象 者となる.それほどまでの需要に医療機関だけで *Harue SUZUKI,〒605-0009京都市東山区三 条通大橋東人大橋町89-1 鈴木形成外科,院 長 こたえることは不liJ’能であり,脱毛はエステティ シャンなど熟練した技術者が行うことが実際的で あろうし,既にレーザー/光脱毛の多くはエステ サロンが担っており,エステサロンでの脱毛は広 く社会的に受け人れられている.このため脱毛に 携わる医療機関は彼らと競争や対、ltlをするのでは なく,脱毛技術においては模範を示し.脱毛を希 望してくる人のなかに存在する隠された疾患や薬 の副作用による多毛症の発見・治療や,期せずし て生じた熱傷などの合併症の相談に乗るなど専門 知識を生かした貢献をすることが医師,医療機関 の役割であろう. 無駄毛は次の4つに分類できる. 1)Hypertricosis:男性ホルモンにはよらない 多毛.薬物の副作用による場合など. 2)Hirsutism:上l l唇や顎,胸部などの男性ホ ルモンに支配される領域の女性の多毛.多嚢胞性 卵巣による場合が多い.急に男性化が起こった場 合には悪性新生物が疑われる. 3)有毛部を再建に使用したために毛が機能に 問題を及ぼす場合.皮弁を起こす手術をする前に 37 Presented by Medical*Online 脱毛を行うべきである. 4)いわゆる無駄毛:代表的な脱毛希望部位は 女性では腋,四肢 ビキニライン,顔.男性では 胸部,背部,肩,頸部,耳. そのほかには,ベッカー母斑,色素性母斑など の有毛性のあざの脱毛がある. 患者選択 白髪や産毛の永久脱毛を希望している人.眼窩 縁より内側.肛門周囲・膣周囲.永久脱毛を期待 するある種の薬物投与中の人およびホルモン失調 のある人.完全永久脱毛を望むなど,期待の大き 過ぎる人.痛みや不快感に全く耐えられない人. 日焼けのある部位.色素沈着のある部位.以上 が,レーザー脱毛をやってはいけない患者・部位 である. 無駄毛を取り除くことを希望するtどもから大 人まで,ほぼ全身の体表面の毛がレーザー脱毛の 対象となる.白髪や産毛の永久脱毛は現段階の方 法では難しい.眼に対する傷害の危険から,眼窩 縁より内側のレーザー/光脱毛はすべきではない. 肛門周囲,膣周囲の脱毛は感染の危険性がある. 禁忌ではないが,注意して行うべき部位である. ある種の薬物投与やホルモン失調は発毛を促すの で,このような条件の人では永久脱毛効果が得に くいことがある. 理想的な患者は,現実的な期待を持ち,Il1常の 内分泌環境にあり,濃い黒い毛と色白の肌の人で ある. 期待される効果 レーザー脱毛の効果は永久脱毛だけではない. 被施術者がレーザー脱毛にどのような効果を期待 しているのか確かめずに施術を始めてはならな い. レーザー/光脱毛では毛の本数の減少,毛が細 くなること,再発毛の色が薄いこと,毛の再生ま での期間の延長などの効果が得られる. 脱毛の概念は次のように定義される.「一時脱 毛」とは休止期への誘導による毛の再生遅延で, 通常1~3か月である.「永久減毛」とは決められ た回数の施術後,成長期毛の数が減少し,その状 態がその部位の毛周期よりも長く持続することを 言う.最近では毛包がレーザー照射により受けた ダメージから回復し,正常毛周期に再び入ること を考え,さらに6か月加えることが提唱されてい る. 永久脱毛と完全脱毛を区別する必要がある. 「完全脱毛」とは再発毛がないか著しく少ないこと を言う.完全脱毛は一時脱毛でも,永久脱毛でも ありうる.レーザー脱毛では通常1~3か月の完 全一時脱毛とそれに引き続いた一部永久脱毛が得 られる. 人によりレーザー脱毛に対する期待は異なり, 一 時的に完全に毛がなくなることを希望する人も いれば,ある部位では永久的に毛が全くなくなり, 他の部位では永久的に毛が少なくなることを期待 する人もいる.毛が細くなり,色が薄くなること を希望する人もいる.どのような期待があり,そ の期待にはどの程度こたえられそうなのかなど, 術者と被施術者の意識にずれがないよう,術前に よく確かめる必要がある. 永久脱毛よりも毛の成長遅延による完全一時脱 毛のほうが得られやすい.どのレーザー装置を用 いてどんな出力で照射しても,どんな色の毛(白 髪以外)においても一時脱毛が可能だということ が分かっている.色が薄く,永久脱毛が難しい毛 も,1~3か月ごとの照射を繰り返すことにより無 毛状態を維持することができる. 1回の施術で完全永久脱毛が得られることを期 待する患者にはレーザー/光脱毛を行ってはいけ 38 ない.1回の施術で永久脱毛効果が得られる例は 稀であり,1回の施術で平均20~30%の減毛が得 られる.すなわち,完全に近い脱毛効果を得るに は複数回の施術が必要である.部位により差はあ るが,一般的にト分な減毛効果を得るための平均 脱毛回数は1~3か月おきに5~7回である.ただ し,すべての患者で同じように効果が得られるの MB工)erma No.165 2010 Presented by Medical*Online ではなく,10~20%の個体では十分な長期減毛効 果は得られない.ルビー,アレキサンドライト, ダイオード,Nd:YAGおよびIPLを用いた長期 観察の比較調査により,どの装置を用いても効果 的な長期脱毛効果が得られることが分かってい る. 安全に用いることができる最高出力は表皮の色 素沈着の度合いによる.皮膚の色が白い患者には どの脱毛装置も安全であるが,皮膚の色が濃い患 者には冷却装置を用いたうえで,波長を長く(近 赤外線),照射時間を長く設定したほうがより安 全に施術ができる. レーザー脱毛の原理 毛は皮膚表面から2~7mm下にある毛包の最 深部(毛球:バルブ)にある急速に分裂する基部幹 細胞で産生されると考えられてきたが,その後, 毛包の幹細胞は表皮の1.5mm下で立毛筋付着部 にあるという説(バルジ説)が唱えられ,最近では バルジの辺りの外毛根鞘に幹細胞があることが報 告され,毛包再生のメカニズムが解明されてきた. 現在は,バルブとバルジの両者が永久脱毛のため の破壊のターゲットに重要だと考えられている. ノーマルモードルビーレーザーを使った動物実 験では,毛周期がレーザー脱毛の効果に影響を与 えることが分かっている.活発に成長中で色素を 持つ成長期の毛包はレーザーによる脱毛によく反 応し,退行期,休止期の毛包はレーザー照射に反 応しにくい.しかしながら.ヒトにおいてはレー ザー脱毛の効果は必ずしも毛周期の影響を受ける ということはない.動物モデルとは異なり,ヒト の毛包では毛周期のどのステージにおいても毛に 選択的にダメージを与えるだけの十分なメラニン が存在するからである. レーザー脱毛の原理が毛包幹細胞の破壊による のではないとする最近の研究結果もあり,レー ザー脱毛の原理がはっきりと解明されるのは今後 の研究による. 毛包を破壊しうる方法としては熱作用(ther一 mal),機械的作用(mechanical),光化学的作用 (photochemical)の3つが考えられ,既にどの方 法も研究されてきた. 1.光熱破壊(photothermal distruction) 光熱破壊は選択的光熱融解理論に基づいてい る.この原理はターゲットに吸収される波長の光 がターゲットの熱緩和時間以内に十分な出力で与 えられたとき,色素を持つターゲットが選択的に 破壊されるとするものである. ノーマルモードルビー,ノーマルモードアレキ サンドライト,800nmダイオード,ロングパルス Nd:YAG,フラッシュランプ,フラッシュランプ とRFのコンビネーション,これらの装置すべて がこの原理に基づいている. 可視光~近赤外線領域ではメラニンは毛包を ターゲットにした場合の天然の色素(吸収体)とな る.赤色光あるいは近赤外線領域のレーザーまた はライトソースはメラニンへの選択的吸収と真皮 深くへの浸透とを兼ね備えるため,600~1100nm 領域で毛幹,毛包上皮,色素に富む毛球部に深く 到達し,選択的な加熱が可能となる.しかしなが ら,表皮に含まれるメラニンにも光が吸収される. このため,特に有色人種では白人とは異なり表皮 の熱損傷が起こりやすく,これを防ぐ対策がレー ザー脱毛における最も重要な課題となると言って も過言ではない.表皮の選択的冷却は表皮を熱損 傷から守るのに非常に有効な手段である.我々有 色人種においては冷却を行わずして,レーザー脱 毛を行ってはならない. レーザーのパルス幅も重要な役割をする.選択 的な熱変性のためにはパルス幅は毛包の熱緩和時 間と同じかそれより短い必要がある.ヒト毛包の 熱緩和時間は今まで測定されたことはないが,大 きさにより10~50msと想定されている.その ため,脱毛用の機器はミリ秒単位のパルス幅に設 定されている. 実際のターゲットは色素を持たず,色素を持つ 構造から少し距離があることもある.一つの例 が,外毛根鞘に並ぶ毛包幹細胞である.これら幹 MB Derina No l65 2010 39 Presented by Medical*Online 細胞は色素を持たず,色素を持つ毛幹からある距 離離れた所にあり,永久的な毛の破壊の重要な ターゲットであると考えられている.熱ダメージ (TDT)の概念はこの毛包の例のために提案され た.毛幹の熱緩和時間よりも長いパルスでは毛幹 のすべての体積が熱破壊され,毛包幹細胞をより よく破壊する.100ms以上のスーパーロングパ ルスでは長期間の脱毛が得られる. 金髪灰色の毛,白髪のように毛の色が薄い場 合この方法では脱毛効果は得られにくい.毛包内 に外来色素(染料,光感受性物質,炭素粒子のよう な)を入れ,レーザー照射する方法が考えられる. 一 番の問題は毛包の深くまで色素を浸透させるの が難しいという点である.2003年に無色毛の レーザー脱毛の付属品としてFDAの許可を得た メラダインはメラニン内包フォスファチジルコリ ンベースのリボゾーム液で,スプレーすると周囲 の皮膚を染めることなくメラニンが毛包内に直接 に入るという.リボゾーム分子は毛包漏斗部を通 過できるのに十分なくらい小さい.一時的にメラ ニン豊富な毛包となり,毛の色の薄い人もレー ザー脱毛が可能になるとしており,実際に永久脱 毛効果が得られたといういくつかのヨーロッパで の報告があるが,TanziとAlsterの行った研究で は,毛の成長遅延はみられたものの,永久脱毛に はならなかった. 2.光機械的破壊(photomechanical destruc- tion or photoacoustic injury) Qスイッチレーザー照射では小さな局所的な 爆発が起こることにより,光機械的破壊が起こる. 熱機械的破壊は熱を閉じ込め,その結果起こるが, その影響範囲はパルス幅に依存する.ナノ秒単位 のQスイッチレーザー照射はメラノゾームの光 機械的破壊により脱毛ではなく白髪化を起こす. QスイッチルビーレーザーとQスイッチNd: YAGレーザーは既に20年間,刺青除去および真 皮メラノーシスの治療に用いられてきたが,Qス イッチレーザー照射では一時脱毛は起こすが,永 久脱毛にはならないことが分かっている. 40 色素塗布後にQスイッチレーザー照射をする ことにより,毛を光機械的に破壊する方法が試み られてきた.1998年ごろをピークに,ソフトライ ト装置(Telsar)が広く普及した.直径10μmの カーボン粒子浮遊液をワックス脱毛した皮膚に塗 り,カーボン外用剤をふき取った後2~3J/cm2の 比較的弱い出力のQスイッチNd:YAGレーザー (1064nm,10 Hz,10 ns)を照射する.しかしなが ら,この方法では毛の成長遅延を起こすものの, 長期間の脱毛は行えない.さらに高い出力の照射 でも脱毛が試みられたが,永久脱毛効果は得られ なかった.メラニンに吸収されたレーザー光が光 音響衝撃波を発生して毛乳頭でのメラノサイトの 光機械的破壊を引き起こすが,完全な毛包の破壊 は起こさないからである. 3.毛包の光化学的破壊(photochemical de- struction of hair follicles) 光線力学療法は光と光感受性物質を用いてター ゲットに光化学反応と治療効果を引き起こす方法 である.光により光感受性物質が光化学的に励起 され,引き続いて毒性のある活性酸素が発生する. ワックス脱毛後の皮膚に5一アミノレブリン酸(5- ALA)を塗布し,3時間後にアルゴンポンプドダ イレーザーの630nmの光を照射した12症例の 報告では,1回施術6か月後,最高出力(200J/ cm2 )で最も高い(40%)効果の,照射出力に応じた 減毛効果が得られた.みられた副作用は一時的な 色素沈着だけであった. 将来的にはALAまたは開発中のその他の薬剤 のうちのいずれかが脱毛に役立つようになると思 われる.この方法は色素を持たない毛に有効であ り,かつ必ずしも光を必要としないので,非常に 安価に脱毛ができるようになる可能性がある. 施術方法 1.レーザー照射6週間前 毛幹に光が吸収されることが重要であるので, 毛抜きでの抜毛やワックス脱毛は行ってはなら ず,剃毛や脱毛クリームの使用は行ってよい.露 MB Derma No l65 2010 Presented by Medical*Online 出部に脱毛を行う場合は日光防御に努め,日焼け した人は日焼けがとれるのを待って施術すること が最も安全である.早く脱毛を開始したい場合は レチノイン酸や美白剤を処方する. 2.レーザー照射前日 照射予定部位を剃毛,または除毛クリームによ る毛の処理をするよう指導しなければならない. 来院後に毛量を写真に保存してから剃毛してもよ い.剃毛せずにレーザー脱毛すると,毛に吸収さ れた光エネルギーにより表皮が熱傷を起こす.抗 ウイルス剤の予防投与が必要と思われた場合は, 当日より開始する. 3,照射当日 照射部位は清潔にし,化粧や日焼け止めクリー ムなどは落とす.必要なときには,1~2時間前に EMLA, ELA-Max, Topicaineなどの麻酔クリー ムを厚く塗って,ラップで覆う.当日に剃毛を行 う場合は局麻剤を塗る前に行う.局麻中毒を避け るため,局麻剤を塗る面積が体表面積の一定の パーセンテージ以上を超えてはいけない.局所麻 酔注射や神経ブロックを使用してもよいが,めっ たに必要ない.被施術者との後日のトラブルを避 けるためにも,術前に術野の皮膚の状態を写真撮 影する. a)脱毛装置 表1に脱毛用レーザー装置と光脱毛装置を示 す.この表に掲載したもの以外にも多くの機種が 次々に発売されている. (1)レーザー装置 脱毛用レーザー装置として初めに用いられたの はルビーレーザーであるが,適用が色白(フィッ ツバトリックスキンタイプ1~nI)で黒い毛の人 に限られるためと,比較的遅い繰り返し照射時間 のため,ルビーレーザーは脱毛には人気がなく なっていった.ロングパルスアレキサンドライト レーザーはルビーレーザーに比べると波長が長い ため光がより深く届くので,表皮に比べた真皮で のエネルギー吸収の割合が大きい.このため,肌 の色の黒めの人での表皮の損傷の危険がより少な いことから脱毛用に多くのメーカーから発売され ている.次に脱毛用レーザー装置として開発され たのは,非常に高いパワー(2900W)のパルス半導 体レーザー装置(Light-Sheer,ルミナス)であり, 黒い退行期毛の除去にもたいへん有効である.比 較的長い波長と積極的な冷却,長めのパルス幅の ため,肌の色の黒い人もルビーやアレキサンドラ イトレーザーに比べより安全に施術可能である. 現在では他にさまざまな半導体レーザーが発売さ れている(表1).ミリ秒単位のパルス幅のロング パルスNd:YAGレーザー(波長1064 nm)の光は 皮膚の深部まで届くが,メラニンへの吸収性は低 いため,高出力を要する.しかし,メラニンへの 低吸収性と表皮冷却装置を合わせるとすべてのス キンタイプに対し安全に脱毛用に用いることがで きるため,実に多くの機種が発売されている. (2)パルス,非干渉性広波長域光源装置 多くのIPL装置も脱毛に用いられている.適 切なフィルターを装着することにより,590~ 1200nmの問の波長の光を出すことができる.波 長,パルス幅,パルス間間隔をさまざまに選ぶこ とができることにより,潜在的に広い領域のスキ ンタイプに有効性がある.術者が患者のスキンタ イプ,毛の色,毛の太さなどにより施術条件を決 定するのを誘導するソフトウェアが装置に付属し てくる. (3)電気一光協調(ELOS)技術 ELOSテクノロジーは電気(conducted RF)と 光学(レーザーまたは光)エネルギーの協調を利用 するものである.電気エネルギーは毛包とバルジ 領域に集中する熱を起こし,光学エネルギーは主 に毛幹を熱する.組み合わせると,毛幹から毛包 にわたり均一な熱分配が起こるはずである.表皮 のメラニンに吸収されないため,RFエネルギー はすべてのスキンタイプに施術できる. b)表皮の熱損傷回避方法 (1)冷 却 上層にある表皮に存在するメラニンがレーザー 光吸収の競合相手となる.表皮を熱損傷から守る MB Derma No 165 2010 41 Presented by Medical*Online 表1.Laser and light source technology(Choi CM, Dover JS, Dierickx CC et al Lasers and Lights Volume l,2nd ed, Saunders Elsevier,2009) Chapter 9 Laser Hair Remova1. Light SOU「ce Wave length (nm) System name Pulse duration Fluence (」/cm2) Spot size(mm) Repetition rate Other features Long pulse ruby 694 Ruby Star (Asclepion) Sinon(Wavelight) 4ms 4ms Up to 35 Up to 30 Up to 14 5,7.9 1Hz O.5-2Hz Dual mode May also be Q- switched Cold air unit May also be Q- switched Long pulse alexandrite 755 Elite 755/1064 (Cynosure) GentleLASE (Candela) Ultrawave ll/lll (Adept Medical) Epicare LP/LPX (Ligh仏ge) Arion(WaveLight) Up to 300 ms 3ms 5-50ms 3-300ms 1-50ms Up to 600 10-100 5-55 25-40/up to 100 5-70 1.5-15 6,8,]0,12、15,18 8,10.12 7,9,12,15 6,8,10,12,14 3/5Hz Up to 1.5Hz 1-2Hz 1-3Hz Up to 5 Hz Cold air or integrat- ed cooling Dynamic coolingdevice Available with 532 nm and/or 1064 nm Nd:YAG Cold air unit.60×65 mm scanner Diode laser 800 LightSheer (Lumenis) VariLite 532/940 nm(lridex) HR-Force (Alderm) Soprano(Alma) MeDioStar 808/940nm (Asclepion) FI Diode Laser (Opusmed) MD30/60 Compact 808nm eLaser 810nm/RF (Syneron) 5-400ms 5-100ms <100ms <B50 ms <500ms 15-40ms 5-250ms <100ms 10-100 <950/<900 <200 <120 Up to 90 (170 with upgrade) 10-40 300/600 〈50/〈50RF 9×9,12×12 0.7-2.8 8,8×24,24×24 10×12 10,12,(4-14) 5.7 1,8,4/1,8,6 12×15 Up to 2 Hz Up to 4 Hz O,3-100Hz Up to 3 Hz Up to 4 Hz 4Hz Up to 3 Hz Up to 2 Hz Coo‖ng handpiece Cooling handpiece Scanner Cold air Contact cooling Cold air Contact cooling Q-switched Nd:YAG 1064 532/1064 532/1064 Softlight(Telsar) Q-YAG 5 (Palomar) MedLite C6(Hoya/ ConBio) 12-18ns 3±-1ns 5-20ns 2.5-3 Up to 12.5 Up to 12 73,4,6,8 Up to 5 Hz Up to 10Hz Up to 10Hz Long pulsed Nd:YAG 1064 CoolGlide(Cutera) Lyra i(lridex) Ultrawave l/ll/川 (Adept Medical) GentleYAG (Candela) Varia(CoolTouch) Cynergy 595/1064nm (Cynosure) Smartep川 (Cynosure) Dualis(Fotona) Profile(Sciton) 0.1-300ms 20-100ms 5-100ms O、25-300ms O.3-500ms <40/<600 Up to 100 ms 5-200ms O.1-200ms Up to 300 5-900 5-500 Up to 600 Up to 500 <40/<300 16.2∞ Up to 600 Up to 400 3,5,7,10 1-5.10 2,4,6,8,10,12 1.5,3,6,8,10, 12,15.18 3-10 3,5,7、10,12,15 2,5,4,5,7,10 2-10 Varies Up to 2 Hz Up to 10Hz 1-2Hz Up to 10Hz Upto2/5 Hz 6Hz Varies Contact(copPer) precooling Contact coolingPhoton recyclingAvailable with 532 nm(Gemini) Available with 532 nm Nd:YAG and/or 755nm alexandrite Cryogen spray op- tional Pulsed cryogen co- oling with Thermal Quenching Cold air or integrat- ed cooling Smart cool scanner Air cooling. Availa- ble with 2940 nm Combined with 2940 nm/1064nm/1319 nm/410-1400 nm Presented by Medical*Online Light SOU「ce Wave length (nm) System name Pulse duration Fluence (」/cm2) Spot size(mm) Repetition rate Other features Long 1064 ClearScan S <200ms Up to 480 3,6.8 Up to 15Hz Contact cooling, pulsed (Sciton) scanner 30×30 Nd:YAG LightPod Neo 0.65-1.5ms Up to 1274 6.8 UptolHz (Aerolase) Mydon C 5-90ms 10-450 1.5,3,5,7,10 1-10Hz Contact or air co()1_ (WaveLight) .lng NaturaLase LP 0.5-100ms <400 4-12 Up to 4 Hz Cold air (Focus Medical) lntense 560-1200 lPL Quantum 6-26ms 15-45 8×34 0.5Hz Contact cooling pulsed (Lumenis) broadband light SOU「ce 570-1200 400-1200 Elora(Lumenis) PPx lsoLaz 2ms 3ms,25 ms <22 <10 <22 20×30 6×12,10×20, 15×30,20×30 0.33Hz O.25Hz Pneumatic system (Aesthera) 410-1400 Nanno Ught <30ms <40 8×40 0.33Hz Contact cooling (Sybaritic) SpectraQuattro av一 ailable 400-1200 SilkLight/UltraSilk 5-40ms <49 13×25 0.5 Cool gel or ice pack (Adept) 600-950 E川pse(DDD) 0.2-50ms 12-22 10×50 0.25Hz Dual mode filtering technique 450-1200 NaturaLight <200ms Up to 35 10×40 NA NA (Focus) 500-1200 Estelux(Palomar) 10-100ms 4-40 16×46 UptolHz Fast coverage rate Cool roller 515一 OmniLight FPL/ 2-500ms 〈90/<50 Varies UptolHz Contact cooling 1000/535一 NovaLight FPL 1200 (American Medical Biocare) 400-1200 Duet/SkinStation 10,35ms Up to 65 22×55 0.25Hz Light Heat Energy (Radiancy) available (LHE) SpaTouch Pro 500-1200 Quadra Q4 Up to 110 Up to 20 27×34 0.5Hz Quad Pulsed Light Platinum System (Derma Med USA) 560-950 Cynergy PL 5-50 <30 10×21, 10×46, 1HZ Contact cooling (Cynosure) 18×46 630-1200 Clareon HR 30,50.70 <45 14.5-33.5 1Hz (Novalls) 630-1200 Solarus HR 20,40.60 <35 14.5×33.5 0、5Hz 770-1100 Solera Opus NA 5-35 10×30 2Hz (Cutera) lPL 525一 StarLux(Palomar) 1-500/<100 Up to 70/ 16×46/ <2/<1Hz Contact cooling 十 1200/1064 <700 1.5,3,6,9 Nd:YAG 650-950/ Harmony XL 1,3.30 1.7 3cm2 3Hz Cool air, Harmony (Alma) available 1064LP/ 10,15,45,600 30-500 2.6 1HZ 1064QS 20ns 0.4-1.0 1.6 1,2,5Hz ELOS 515-1200/ Lumenis One 3-100ms/ 10-40/ 8×15,15×35/ UptolHz/ Contact coo‖ng technology (Lumenis) 800nm/ 5-400ms/ 10-100/ 9×9/ Up to 2 Hz/ 1064nm 2-20ms 10-225 2×4,6,9 UptolHz Optical ene一 eUght DS, eMax <25/ Light energy 12×25 0.7Hz Cooling(5-20°C on rgy(680-980 nm)combin一 (Syneron) <200RF 〈45RF energy <25」/cm3 skin su斤ace)combined with skin ed with elec一 impedance control trical energy radiofrequ一 ency MB Derma No.165 2010 43 Presented by Medical*Online 方法の一つが皮膚の表層を外からレーザー照射 前・中・後に冷却することである.最も簡単で安 価な方法は氷か冷やしたジェルを皮膚にあてがう ことである.もっと洗練された方法は,皮膚表面 に当てたガラスかサファイアの窓を通じて循環す る冷たい水(2~6°C)で伝導性コンタクト冷却を行 うことである.サファイアはガラスより熱伝導に 優れ,皮膚からより速く熱を奪うことができる. 0°Cのサファイア窓を0.5秒間皮膚に当てると基 底層の温度が20°Cまで下降する.さらにサファ イアは皮内にレーザー光が入るのを助け,表皮に 光が逆散乱するのを減らす.そのうえ,ガラスま たはサファイア窓が適度な圧で皮膚に圧しつけら れると,真皮が圧せられ,毛球とバルジの深さが 30%まで浅くなる. 冷却媒体として冷却した空気を圧をかけて吹き つける方法は,理論的には空気は熱伝導率がサ ファイアの1/5しかないため,あまり効果的では ない. 他の方法としては蒸散による冷却で,レーザー 照射の直前に冷却ガスを噴射する方法がある.蒸 散冷却は伝導冷却より効果的であるため,表皮と 真皮との間により大きな熱格差を生じ,真皮冷却 の副作用をより生じにくい.照射時間が長いとよ りよく冷却される.スプレーと照射の間隔は冷却 剤が完全に蒸発できるよう十分な長さが必要であ る.冷却剤が少しでも皮膚面に残れば,レーザー 光を散乱させてしまうからである.冷却剤は消耗 品であり,購入して定期的に入れ替えなくてはな らない. (2)陰圧による皮膚平坦化(pneumatic skin flat- tening,以下PSF) PSFは皮膚を冷却せずに表皮の熱損傷を防こ うとする方法である.陰圧により皮膚を平坦にす ることにより光線透過性を向上させる方法で,表 皮のメラニン密度と真皮の血液量を減らし,ター ゲットの毛包を皮膚表面近くに持ってくるため に,光が有効に使われ,施術時の痛みが少なく, 術後の発赤や腫脹が少なく,安全性の高い脱毛が 44 できる. c)施術技術 施術部位の目安のために施術用の格子をあてが うなどして,二重照射や照射部位を飛ばしてしま うことを防ぐ注意が必要である. いきなり高出力で照射してはならない.最適の 施術条件はそれぞれの患者ごとに設定すべきであ る.必要ならば,施術部位のなかの目立たない所 にテスト照射をすべきである.照射出力は,白く なったり,水庖が出来たり,剥離したり,ニコル スキー現象が出たりなどの急性表皮損傷の兆候が ないか観察しながら,注意深く徐々に増加させる べきである.最大の効果を得るためには最も大き いスポットサイズで,耐えうる最高の出力を用い て照射するのがよい. 照射後ハンドピースを上げ,全体をカバーする まで隣の部位に押し当てていく.皮膚とハンド ピースの接触が不十分な場合,冷却が不卜分にな り,表皮損傷が起こりうる.接触型のパンドピー スでは5~10パルスごとに汚れをふき取る必要が ある.汚れがハンドピースに付着したまま照射す ると,表皮に損傷を起こしやすいからである.患 者と患者の間にはハンドピースの感染予防が必須 である. 理想的な照射直後の反応はほかに変化がなく, 毛幹のみの蒸散である.数分後に毛包周囲の腫脹 と紅斑が現れる.その程度と持続時間は毛の色と 毛の密度に依存する.もしも表皮の損傷の兆候が あれば出力を下げるべきである. d)施術後の処置と術後の注意 氷冷により術後の疾痛が軽減し,腫脹を最小限 に抑えられる.よほどの広範囲の照射でなければ 鎮痛剤は通常必要ない.適応である場合は,抗ウ イルス剤のコースは完了させるべきである.施術 後の口光照射やあらゆる外傷(例えば,つついた り,引っかいたり)を避けなければならない.ま た,施術後の炎症を長引かせてはならない.表皮 が少しでも損傷されれば抗生物質軟膏を日に2回 塗布する.術後の腫れと赤みを軽減するためにス MB Derma No l65 2010 Presented by Medical*Online テロイド外用クリームを処方してもよい.始めの 1週間は直射日光への曝露を避けるか日焼け止め をつけなければならない.水庖やかさぶたが生じ ていなければ化粧をしてもよい.損傷を受けた毛 は最初の2,3週間の間に抜け落ちる.それが毛 の再生ではないことを患者に分からせておくべき である. レーザー脱毛には色素を持つ毛幹の存在を要す る.そのため,毛の再生がみられたらすぐに次の 施術ができる.毛の再生は解剖学的部位によって 異なる自然の毛周期に基づいている.平均的照射 間隔は6~8週間である. e)副作用,合併症 レーザー脱毛は痛みを伴わない方法ではない. ほとんどの患者が施術中および施術後にいくらか の不快感を経験する.ある程度の出力を用いる と,多くの患者で毛包周囲の腫脹や発赤が生じる. その程度や持続は毛の色や毛の密度に依存する. 通常は数時間続く. 過剰な出力を用いた場合や日焼けをした部位に 照射した場合は表皮を損傷する.単純ヘルペスが 再燃することは少ないが,起こりうる.細菌感染 の可能性はたいへん低いが,表皮損傷が起こった 場合には起こりうる. 汗を非常にかいた後や運動後に脱毛を行った場 合,施術前後に水泳や入浴を行った場合に毛嚢炎 が起こりうる. そばかすの消失や刺青が薄くなることはよく起 こることである.患者にこのことを知らせておく べきである. 若い女性で黒めのスキンタイプの数例の患者で 発毛が誘導された例が報告されている.2つの異 なる現象が観察されている.照射部位で細い生毛 が濃い色の太い毛になるケースと,照射野に隣接 する部位で長い細い毛が生えるケースである.こ の現象のメカニズムを解明するためにさらなる検 証がされている.この副作用の治療は,さらに照 射を続けることである. 光による脱毛装置はメラニンに強く吸収され深 く浸透するようデザインされている.このため, これらの装置は網膜の傷害を引き起こす心配があ り,患者と術者は適切な眼の保護が必須である. 眼の止および眼の近くの照射はすべきでない.そ れ以外の部位の照射はすべて安全にできる. MB Derma No l65 2010 45 Presented by Medical*Online